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トップハート物語(3870)立志伝敢闘編
17/12/03
2011年(平成23年)4月中旬。
 土日休暇の新人ケアマネジャー宏美さんは、社内ケアマネ会があるので出勤して来た。朝事務所に来た。開口一番、
 「Mさんが亡くなりました。」
 「えっ。」
 暫く声も出なかった。
 本当か、と聞き、信じられないと何度も言った記憶がある。
退院したと聞いて居たのは数日前だった。それが、突然亡くなったとは。息せき切ってその説明をする彼女。前日からの様子を話し始めている。その説明が、余り耳に入らない。
昨日は二人の子供の授業参観で休みだったのだが、
 「ずっと電話が鳴りっぱなしで、参観に出られないし、途中で電源が切れてしまったので、代わりの自分の電話を使って・・・・」
 主治医が、緊急で有るにも拘らず往診に応ぜず。
 何しろ、自分が主治医を奪い取って数々の問題発言があった主治医だった。医療関係を仕事として居た娘さんが、近くの医院を探して面談の時に、
 『私だったら、もっと介護度を上げる事が出来る。』
 と、言っていたので利用者がそこに決めた。
ところが、変更申請をした結果、同じ結果だった。往診をすると言いながら、全く来ない。来ても、何もせずに数分で帰る。今度は、
 『自分の病院近くに引っ越してきたら、毎日でも往診が出来る』
 と、言ったので一時入院先から退院時にその主治医が見つけて来た住宅に入居した。
ところが、そのように緊急を要する事態になっても忙しいと言って来ない。新人ケアマネジャー宏美さんが、訪問看護ステーションに相談。
 「手続きが必要なのでその手続きと点滴を預けてくれて整えば直ぐにでも行きます、と言われたので、主治医に話をしようと電話を入れても不快な応対で話に成らない。その話を訪問看護にすると、自分が掛けてあげると言ってくれて何とか了解を貰って指示書を作成して貰って、行って貰いました。点滴して直ぐに調子は良くなったんですが、暫くするとまた悪化。看護師の判断で救急搬送し、応急処置を受けたのですが、今日の朝4時半に娘さんから電話で、亡くなりました。葬儀などどうしたらいいのでしょうか、と連絡がありました。」
 そのような報告があった。
 私が、まだケアマネジャーを始めた頃に紹介があって担当を引き受けた。最初は元気そのもので、認定が下りるかどうか分からなかったが、要支援で下りた。しかし、段々と状態が悪化してしまいベット上から下りる事さえも厳しくなって来た。
部屋の階下に見える畑にトマトやキュウリなどの野菜を育てて、傍の水たまりのような処に金魚などを飼っていた。その世話をしたいと思うが、出来なくなった。その代行は、介護保険では無理だった。
買物や外出もしたいと、幾ら介護保険の趣旨を説明しても分からない利用者だった。その為に、障害者手帳を申請して時間の不足分は何とかクリアした。
 問題は、畑や池の事だった。強制的に指示して、毎日2回のケアを数分前に終わり僅かずつ分けて帰り掛けに水を撒いたり餌をやったりする事にした。30秒程度の作業だったので何とかクリアして、その希望に沿った。
問題は、男性なので女性に興味を持つ事だった。若い女性ヘルパーにはよだれを垂らすほどの顔をするが、年齢の行ったヘルパーさんだと意地悪をして来ないように策を弄した。壁一面には、若い頃に女性と行った方々の観光地でのツーショットの写真が貼ってあった。その中に、ケアに来た時に撮影した当社の美人過ぎる社員の写真も数多くあった。
 携帯の待ち受け画面にはその彼女の写真が。そして、当社のホームページを飾る彼女の写真をインターネットから取り出して、拡大して部屋に貼ってあった。彼女のケア時の態度と他のヘルパーさんとの態度が異なったので、注意をしたが直らない。
ついに我慢出来ずに、事業所毎切った。何度も注意したのだ。
 「もし若い人が良ければ、他の事業所に替わって下さい。自分で、探して下さい。その事業所に私が依頼しますので。自分で探せば、若い人だけの事業所など無いというのが分かりますから。」
 そう言って実行した。
 何度懇願されても、元に戻さなかった。それでも、何度も来て欲しいと、直接ヘルパーさんに電話をしたらしい。他のヘルパーさんにも、彼女に会いたいと言っていたようだ。鬼と化した私は、その希望など歯牙にもかけずに新人ケアマネジャー宏美さんに引き継いだ。
 私より、新人ケアマネジャーの方が若い女性だし少しは満足するかと思っていた。段々と悪くなる体調、ベット上だけの生活。ヘルパーさんが来て話をするだけでも、苦しくなる。
「入院は絶対いやだ。」
と拒む。
時々私に連絡があった。苦しくてどうしようもないという叫びだったのだが。移植しか生きる道はないと言われていた。私もどうしようもない。
 そして、今日の死という日を迎えたのだ。

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