お知らせ


お知らせ

RSS

一覧に戻る

トップハート物語(3729)立志伝敢闘編
17/09/18
2011年(平成23年)3月中旬。
約束時間を少し早目に彼は来た。昨日、突然電話して来た彼だったが、思い出せない。
彼は、
 「インパクトのある顔をしているので、会えば思い出すと思います。」
 電話では、そう言っていたが会っても思い出せなかった。
 結構記憶力は良い方なのだが、8年前の平成15年当時に飛び込みで大東本社に来たという。私は、前年の平成14年夏には主戦場の大東本社を突然居なくなって、ここ守口市に来ていた。
大東本社は人材の不毛に嘆き任せてしまったのだ。その合間を縫って、時々には顔を出したかもしれないが15年と言うと、既に代替わりをしていて新たな管理者が居た筈だった。そんな事を思いながら、全く見覚えの無い人物と向かい合った。
 「相当苦労したようだな。」
 知らない顔でも、皺などが目立ち36歳とは思えない苦労の表情が読み取れた。
 「苦労しましたよ。それも、ここ3年くらい。電話でも話をしましたが、あれから東京品川にある本社に転勤になって、ファンドで実績を上げていたんですが、外資系になって利益至上主義になってしまってお客様の立場に立たない無意味な売り買いを強要されて、退職したんです。その後、大井町に事務所を借りてファンドマネジャーを始めたんです。」
 「大井町と言ったら、俺が住んで居た街だ。20歳頃の事だ。」
 本当ですかと言って、自分の住んでいた場所の地図を書く。
 「順調に運用していたんですが、お客さんを取って行ったと言われて訴えられて損害賠償金を支払いました。外人は直ぐに訴えますので。」
 そして、
 「この関西にまた戻って来て、友人などの資金を運用して利ザヤを得て居ます。現在は25人くらいのお客さんで、20億くらい運用しています。」
 そんな話を、暫く聞いた。
 運用の資金を投入させられないように、隙を与えないようにと少しは警戒していた。
その為に、
 「東京はどこに住んでいた。」
 「最初は北区の北赤羽です。」
 「まて、俺も赤羽に住んで居たんだ。」
 などと、他愛もない話をしていた。
 昨日、
 「菓子折を持って挨拶に行かせて貰います。」
 「菓子折りなんていらない。俺は糖尿病だ。手ぶらで来い。」
 そう言っていたのだが、
 「手ぶらで来る根性が無くて。」
 と、言ってなにやら「江戸」の名前着いたお菓子を持って来た。心憎い、気使いだった。
 「ところで、社長はこの会社を始める前は何をしていたんですか。」
 「言いにくいが、証券会社に勤めていた。」
 「本当ですか!?」
 と言って一瞬絶句をしていた。
 「でも俺は、証券の売買に携わった事が無い。良かったのは、内部の経理や人事、総務などの事務関係だったので、どこの会社にでもある部署で経験を積めた。だから、この会社にはそれに類する事務員が居ない。全て、私がしているからだ。数字が読めなければ、戦略が建てられない。」
 私が証券会社にいた経験を持っていると知って、営業的なトークはほとんど無くなった。そうなると、こちらのペースになる。
 「君はどうしてそのような業界に身を置いた。」
 「実は、私は○○大学を出て居ます。親も祖父も、曾祖父も警察官僚で、姉は医者です。教授に勧められて、東京の箱崎にある商品取引所に入りました。その後、・・・・・・」
 彼の話しを聞いていると、有能な人材である事が分かった。今度は、こちらの世界に引きずり込む。当社の成り立ちや、考え方や戦略や実績を話した。
 「自分のいとこが介護施設に入っていて時々その話を聞きますが、平日は施設で、土曜日曜が宅配便のアルバイトをしているといいます。どうして、そんな待遇と、同じ介護なのに社長の会社と大きく違うんですか。」
 「それは、仕事がある会社とない会社の違いで、どの業界だって仕事がある会社とない会社では給与の差がある。そんなの当たり前だろう。仕事をした分だけしか、報酬は入って来ない。施設運営は、入って来た分を新たな施設設置の投資に回すから、介護職員まで回らない。新しい給与の安い介護職員が入って来た方がいい。古くても新しくても、給与が安くても高くても、入って来る報酬は同じだ。同じだったら、安い給与の労働力の方が良いに決まっている。施設勤務は、いくら頑張っても給与の限界はあるし出世だって、一定の地位は理事長の家族が占めているから。将来の生活設計をどうするのかを考えないと。」
 などと、私は知ったかぶりをしていた。
 昼までの2時間、時間の過ぎるのも忘れて話し込んだ。
 「2年を目途に、絶対にファンドの世界では名をなすようにと思っています。2年後また挨拶に来ます。」
 そう言って、最後まで記憶を呼び戻す事が出来なかった彼は帰って行った。

一覧に戻る


  • ヘルパー講座・セミナー 最新情報
  • ケア事業・サービス 最新情報