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トップハート物語(3631)立志伝敢闘編
17/07/23
2011年(平成23年)1月中旬。
 請求担当者のキラキラ目の玉緒ちゃんが来た。昨日、余りの高額な自費請求を知った私が、その明細を求めた。しかし、
「引落手続きは既に終わっています。」
という。
問題は、認知症を妻に持つ夫と妻への請求額だ。介護保険を適用できるなら何の問題も無い金額だ。しかし、その妻に対する支援はショートステイやデイサービスを毎日利用しているので、それだけで介護保険オーバーとなる。
訪問介護の分は全額自費となってしまった。それでも、介護保険利用料の半額にした。それでもなお、金額が大き過ぎる。
 「その金額では、引落出来ない。ケアマネジャーと金銭管理を任されている私、そして、自費の訪問介護も当社だ。介護保険適用が及べば3万くらいで済むものを半分で夫婦合わせて自費30万では、問題にされ兼ねない。今は、正気でそのたびに了解を貰っているが、突然、変心するのがお年寄りだ。勝手にしていたなどと言われない事を言われたら、もう目も当てられない。」
 「しかし、もう手続きはとりました。」
 「今月は我慢して、分割で支払って貰う他ないだろう。」
 「それだったら、引落口座の預金残高を無くして下さい。それだったら落ちません。」
 「それでも、他のデイやショートの支払いもある。そうはいかない。取り敢えず、旦那さんの病院に行って今月は年金が入るのでそれを集合させて対応する事を諒解貰って来るから。」
 そう言って、夫の入院している遠くのリハビリテーション病院に行った。
 山の中で、かなりの急な坂を登って行くので、路面が凍っている日は避けないと行けない。この日は、晴れだったので思い切って行った。小1時間走って行くのだが、同行はいつものNPO法人常勤理事の智子さんではなく、当社で運転技術が最高という新人ケアマネジャー宏美さんとした。
 病室に入ると、元気そうな顔をして寝ていた。色んな我儘があるが、それを一応聞きながら、今までのストレス解消を狙った。一通り終わり、今後の考えを聞いた。
それまで、何度か電話があり、
「早く退院して妻を見て、自宅で生活したい。」
と懇願していた。
私に医師に言ってくれとか、来てくれとか言っていた。その言葉を尊重して、今日は医師にその意思を伝える積りで来たのだ。ところが、我儘な意思が高じて、
 「早く戻って、妻の面倒を見て生活したいのですが、この体では妻の面倒をみる事が出来ないので、暫くはリハビリを頑張る。」
 などと言い出したのだ。
 つまり現状維持だ。その点に対しては、この時点では何も言えない。何しろ、本人の意思が尊重されるべきなのだ。それでも、私の頭の中では金銭問題がうごめいていた。
 リハビリ病院の師長が来た。一通り説明を受けた。その場で、師長がMSWに連絡をして来て貰った。その辺りから、支払いの関係の話に成り、
 「定期預金を解約して、妻の掛かっている支払いをして欲しい。」
 などと言い出した。
 それを機に、MSWに金銭の現状をお話しして、
 「このままでは、長く持たないので今月一杯で退院を検討して欲しい。」
 そう要請すると、本人もそのような返事をした。
 大きく流れが進展した。
 「認知症の奥さんの面倒をみる事が出来るんですか。」
 「奥さんはいたって正常になりました。ただ、精神的に不安になり誰かいないと徘徊をします。旦那さんは、寝たきりでもいいんです。そこに居るだけで奥さんも安心ですので、どこにも行きません。奥さんの経費だけでも、高齢者専用賃貸住宅での家賃、食事費、介護保険利用料など月20万円は掛かっています。これが、自宅に戻る事になれば介護保険利用料だけに成ります。」
 そう言って、状態がどうかではなく、経済的な問題を全面的に出し話した。
 利用者の横に張ってある計画表を見ると、週5回のリハビリをしている。2種類あり、言語聴覚士と理学療法士のリハビリだ。それぞれ、40分程度で後は寝ているだけ。特に、歩行に対するものはほとんどない。それで月15万から20万円も支払っているのでは、幾らあっても足りない。
 金銭的な問題を、夫にも話をして自覚を促した。医師が飛んで来た。主治医で、再度話をして諒解を貰って、今月一杯をめどに退院を決め区分変更申請をすることとした。
 1時間半ほどの話が終わり、戻ろうとすると利用者が、
 「小遣いが欲しいから、1万円ほど置いて行ってくれ。」
 「今看護師さんに言われたばかりでしょう。1銭も置いて行っては駄目だと。責任が持てないと言われたでしょう。」
 「リンゴが欲しい。毎日食べていたから。」
 「それも駄目だと言われたでしょう。腐る物は駄目だと。とにかく、早く退院出来るように、リハビリを頑張って下さい。」
 そう言い置いて、病院を後にした。

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