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トップハート物語(3528)立志伝敢闘編
17/05/30
2010年(平成22年)11月中旬。
朝事務所に来てスケジュール表を確認した。昨夜、ふと頭に浮かんだのは、
 『もしかしたら、あの病院でリハビリテーション科の医師と入院している利用者の病状の話をしたいと指定され待ち合わせていたのは、今日だったのでは』
 そう思い浮かんだのだが、たまたま、昨日はスケジュール表を会社に忘れてしまったのだ。
確認出来ないままに、朝事務所に来て手を合わせながら、他の日にちでありますようにと願いながら11月カレンダーを目にすると、やはり間違いなく懸念が、合っていたのだ。
 これまで、病院との約束に間違いがあった事が無かった。それも、医師がその相手だ。どう説明したらいいだろうか。忘れたと率直に言うべきか。そうなると、医師を軽視した事になる。それは不味い。
プライドの人一倍高い医師の事だ、これから長い付き合いで何があるか分からない。それでは、相手から連絡が来て初めて気付いたように装うか、それも演技が下手だから駄目だ。今気付いたと、始まる時間が来たら連絡をするか。
色んな思いが錯綜した。最後に辿りついたのは、昨日、本社の支援費関係で不正処理が発見された件で、潔く2年前から先日退職した担当者が行っていたのが分かり、取り敢えず遡って返金すると言えと指導した事が浮かんだ。
 天の配剤とはこの事だ。決心をして、9時過ぎにMSWに連絡をした。以前の待ち合わせ日時を取り次いだ方だ。失念してしまった事を詫びて、今日今すぐにでも行きたいと、その時間を指定して貰えるよう医師に取り次いで貰った。
11時にとの返事を貰った。ホッとした。
 遠くの病院なので連れて行ってくれる者を探す。嘘つきせんと君が空いている。10時半に迎えに来るように依頼。11時に病院に入る。利用者の病室に向かう。マスクをしているが、それ以外の部分で若い、かなり若いと思われる看護師さんのような方が、利用者の体を動かしていた。
 「おはようございます。担当のケアマネジャーです。」
 「佐藤さんですか。いつも、佐藤さんに会いたいと患者さんはおっしゃっています。」 
 「どうでしょうか、腰の痛みは消えたでしょうか。ここまでギャッジアップしているので、ある程度の座位まで大丈夫になりましたか。」
 「いや、痛み止めをしながら少しずつ体を動かせています。ただ、嘔吐が凄いので食事をせず、ここ1週間は点滴のみです。」
 その間、私は、マスクから出ている眼だけを見つめていたが、さわやかな印象を持っていて、悪い癖でずっと睨むように視線を逸らさなかった。その間、説明を聞いても、頭の中では看護師さんかなとか、名札が無いから看護助手とか。
もし、そうだったら当社に来て貰えないかななどと、勧誘の機会を狙って居るような自分なのに、もう一人の自分を見ていた。
 20分近く話をすると、昨日、私が待ち合わせを失念した相手の主治医でもあり、リハビリテーション科の責任者の医師が来た。謝罪をして、目を見た。どんなに怒っているのだろうかと、覚悟を示したのだ。
 「待っていました。」
 と、ほほ笑みながら言って、少し待って下さいと一旦病室を出て行った。
また、その若いマスクの女性と利用者だけになった。突然、利用者が
 「心付けをするので、看護師さんとヘルパーさんの分用意して下さい。」
 聞きにくい、か細い声で言った。
それを、私がなぞって言うと、
 「それはここでは禁止していますから、何も考えなくて良いですよ。」
 と、その若い女性が返事をした。
 「何度も怒られますので。名前だけでも聞いて置いて下さい。」
 そんな事を言うので、大笑いしてしまった。
しかし、チャンスと思って
 「利用者がお名前を聞いています。宜しかったら教えて下さい。」
 「私の名前は、ここに書いてあります。」
 その指差す先を見ると、今日のリハビリ担当者としての名前が書いてあった。若い人を思わせる今風の名前と、肩書が理学療法士と書いてあったから、驚いた。こんな若い人が、理学療法士だというのか。
何度か、利用者を元気づけようと、若い人にさすって貰っていいですねと言おうかなと思っていたが、言わなくて良かった。小柄で今時の若い髪形と、病院という場所での精一杯限界の化粧の跡が目の周りに感じられた。
 暫くすると、医師に呼ばれて面談室で、事務長を交えてこれからの方針を聞いた。
「最悪、このようにリハビリが出来ない状態であれば、転院となります。」

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