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トップハート物語(3487)立志伝敢闘編
17/05/09
2010年(平成22年)10月下旬。
私が朝間違って消してしまった、息子の携帯電話番号を調べる必要があるので、一時帰宅している24時間見守り対応の妻が持っている携帯電話から息子の電話番号を調べて貰う事を、介護管理者にお願いした。
連絡が来た番号に掛ける。出ない。今まで、出られない場合は留守番電話になったのでおかしいと思い、夕方病院に妻を連れて夫を訪問するというので、再度指示して夫の携帯電話で調べるよう指示した。先ほどと全く違っていた。
 その電話番号に掛けた。利用者の病院での容態が回復して、麻痺が全く無い状態であることを報告して、安心させた。そのうえで、主治医の外科医からの、今後の方向を話し合いたい旨を告げた。
先日、私が彼の奈良県にある自宅まで行き、認知症の妻のショーステイ入所契約書類に署名押印を求めに行った時には、印鑑を準備していたのに、あの身勝手なヘルパーの行為に怒り押印されずに拒否されてしまったのだ。
硬化した態度でも、
「最終的に押印やサインが無ければ動かないのであれば行く。」
と言っていたので、大丈夫だと思っていた。
 それが、
「意思表示や結論を付けるものは全く受け入れられない。」
と言われてしまった。
何度も、何度も
 「方向付けを示してくれるだけで、後は病院と私がしますから。」
 と、説得しても頑として受け入れない。
 関わりを拒否しているのだ。認知症の妻にして貰ってと言うが、
 「判断能力の問題があり、現在、本人も妻も難しい。」
 そう言ったのだが、がんとて受け入れない。
 こんな話をしながら、あるシーンを思い出した。松本清張の「砂の器」だ。映画を何度も見た。ハンセン氏病に掛かっている初老の男性が孫を連れて戻る事のない死出の旅に出る。
ある山村で、子供のいない村の駐在の警察官に接して、初老の男は隔離されて園に入る。別れ別れになった子供は家を出てしまう。探したが見つからずに、長い年月が過ぎる。
定年を迎えた警察官は旅行に出る。その旅先の映画館である写真を目にする。それは、あの少年が大きくなった姿だ。世界的な音楽家になった少年を訪ねて、やっと会う事が出来た警察官は、余命いくばくもないハンセン氏病の祖父に会ってあげるように説得する。
 その二人が人目に合わないように場末のバーで密会した夜、その警察官が死体となって発見される。あれほど、離れ離れになった祖父を追いかけて家を出た少年にとって、苦難の道を歩く掴んだ名声が、過去を暴かれる事によって失われてしまう。
その判断が、殺人として表現される。その犯人を追いつめる過程が実にすばらしい繊細なものであり、また、最後に園に隔離されている祖父に示される写真にある少年の成人した姿を見て、号泣しながら
 「こんな奴しらね。しらね。」
 と、絞り出す声で否定するのだ。
 しかし、最後の演奏会で描く孫の脳裏と園で過ごす祖父の脳裏に浮かぶものは、あの村を出て浮浪者として二人で歩いた日本海に沿った街道での多くの出来事だった。
 感動場面を見るために、何度も映画館に私は通い、それでも飽き足らずビデオ借りて何度も見た。
 その孫に会うように説得する初老の警察官と私がダブってしまっていたのだ。園に隔離されている祖父は、入院中の親だ。しかし、その親は、この夜も電話を看護師さんにお願いして、私に掛けて来た。
その電話は、私が息子さんと掛けている最中に同じ電話に掛けて来たのだ。話し中の為に出られなかった。出られないので、居宅支援事業所に掛けて来たのだが、転送で新人ケアマネジャー宏美さんに掛かった。
それを受けて、メールで
 『どうしても、佐藤さんと話をしたいと何度も訴えられていると看護師さんから電話でありました。掛けて下さい。』
 息子との話しが終わったので掛けた。
 看護師さんが出て、お話ししたいと何度も言っていと、本人に代わった。
「これから来れませんか。」
と何度も言われた。
そして、お願いしたい事が沢山あると、仕事の事、妻の事、支払いの事、11月予定していた旅行の事などを何回となく繰り返し繰り返して、同じ話をこれほどまで繰り返すのは、直近の記憶も完全に忘れていると分かった。
 そして、息子に会いたいと。妻に会いたいと。妻は直前に来たばかりだった筈だが、覚えていない。帰りたい、いついるまでに病院に行かないと行けない。それをまた繰り返す。そして、今来れないかと繰り返す。
 「頼りは、佐藤さんだけなので。お願いします。宜しくお願いします。」
 砂の器では、祖父は孫を知らないと、邪魔にならないように言う。
しかし、利用者は小さい頃の子供を追い出して苦難の道を歩ませた。それなのに、今は息子に会いたいという。これはやはり身勝手か。

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