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トップハート物語(3481)立志伝敢闘編
17/05/06
2010年(平成22年)10月下旬。
病室に入ると、不在だった。探すと、談話室で、リハビリの先生と話しをしていた。看護師さんや理学療法士が
 「ずっと、佐藤さんはまだ来ないのか。佐藤さんに会いたいと言っていました。」
 そう言われると、何とも言えない気持ちになる。
 主治医は、
 「脳の手術を先週したばかりなので仕事の話しやお金の話など、複雑な事はまだ無理だ。」
と言っていた。
しかし、利用者の言葉では、新聞を配達する仕事を金曜日にしていたので、
「そのアルバイト先との話はどうなったか、今度の金曜日に仕事に行かないと行けない。」
と言っていた。
何度ものその話を繰り返すが、こちらでアルバイト先に返事をしたいのだが何をどこでしていたのか分からない。40分の面談の中で10回くらい同じ事を繰り返す。そのほか、認知症である妻の行方を聞く。
「ショートステイ入っている。」
と何度も同じ言葉を繰り返すが、直ぐに同じ事を聞く。
 「寂しくないようにして下さい。」
 と、言って頭を下げる。
 ついには、
 「誰も居ないところに居て、可哀そうだ。」
 と言って泣き始める。
 妻の為に、生きて来たような老いを迎えてからの人生。
 「いつ自宅に帰るのか。いつになったら戻れるのか。」
 と聞く。
 リハビリの先生が答えるのだが、帰った後も何度も聞かれた。勿論言質は与えられない。医師には、直っても奥さんの症状があり戻って今まで通りの生活は難しいということを、伝える訳に行かない。辛い心境だ。
まだ、立つ事も出来ないので、今の段階では何とか言い逃れが出来るのだが、これから回復して来るに従って難しくなる。
 「妻が一人で可哀そうだ、金銭的に幾ら掛かってもいいからさびしくしないで欲しい。」
という言葉と、妻のショートに居るのが嫌だという言葉を聞き本来なら自宅で見守りしたい。
しかし、24時間体制でなければ生きられない、危険性を含んだ妻なので、夜間だけでも一晩自費で15000円掛かる。30日だったら45万円だ。それも、夜間の自費だけだ。それでは、今後に禍根を残す。
頭の中では、半分だけ自宅の計画が出来上がっている。家族も利用者も私に何もかも全面的に一任としているのだが、経済的なものについてはなるべく立ち入らないようにしていた。しかし、
 「何度も金銭的な事、支払いなどを気にされていました。」
 と、いう事から預かって居た貴重品を入れてある袋を持って来た。他人には開けられないように成って居たのだが、大勢の下で開封した。通帳などの貴重品がひとまとめになっており、その残金を確認した。
無いと言われていた各種支払い負債に十分な期間支払える程の余力があったので安心した。夫婦で長期間厚生年金を掛けていた賜物だ。それでいて、まだ週に1回アルバイトをして収入を図って支出を抑えている。
 病院を辞して4時半に事務所に戻った。アカイカを持って行き、お局様筆頭サービス提供責任者に切って貰った。戻る途中に、本社サービス提供責任者から電話があり、
「代表者印が欲しいので明日早朝に行く。」
との事だった。
戻って来て、イカ料理に付き合って居ると、今度は先ほど電話を掛けて来た本社の別のサービス提供責任者が
「これから契約書に印鑑を貰いに行きたい。」
という。
30分ほどして料理している事務所から自分の事務所に戻る。大東本社から来たのは、前に電話掛けて来た他の二人とは違ったサービス提供責任者だ。
 「何だ、前も大量に押したが、また押すのか。」
 「ここんところ、大量に契約したいと依頼があるんです。毎日、新規契約があるんです。」
 「どうしたんだ、だから、明日その対応を打ち合わせするが場所が分かるか。」
 そう言って、私が描いている必要人員の新規採用をして、チームを作る事を話しした。
 「管理者から少し話を聞いたんですが、私個人としては長期的にみれば賛成です。しかし事務所内でも、色んな意見が飛び交って明日の会議では議論になると思います。」
 「分かった、しかし、市役所や施設や支援学校などから大量に依頼があったら、受けるようにしたい。一度出来ないと断ったらもうチャンスが無いと思うように。信頼は一度だけだ。もうヘルパーが居ないとなったら、今度は新たな事業所を探す事になる。謙虚に物事を考えるように。」
 「それでも、人件費との兼ね合いがあるから。」
 「何を偉そうなことを言っている。収支を考えるのは俺だ。君たちは、どうしたら効率良く仕事が出来るか考えるように。社員が登録さんと同じ仕事をしていては駄目だ。基本は管理だ。管理をどのようにしたら、効率良く仕事が出来るかだ。自分達が、自分達の本来の仕事を差し置いてケアに入らなければならないような状態では困る。それを解消して、次の段階の仕事に向かわないと。これに手を緩めず、さらに営業をするとかに対処して欲しい。もっと、収益を上げるチャンスが無いかと。」
 帰る姿を見送って、明日の会議の会場となる中華飯店に予約を入れた。


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