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トップハート物語(3266)立志伝敢闘編
17/01/13
2010年(平成22年)7月中旬。
あまりに若い彼女との対面だった。若い時の写真を私に見せて、一緒に音楽を聴いて、私とかなりの年の差を感じさせないような、変な表現だが甘い時間だった。その時に、私に思いがあって彼女の誕生日に人を集めようと思った。
簡単な食べ物をもって、関わりの余り無い社員を呼んで祝ったのが4年前だった。それから、長く続いている。しかし、私が呼ぶ社員はいつも不文律があって、関わりの薄い独身の者だった。みんな結婚して、その対象者が居なくなってしまった今年。
 始めた当初は10人もの人が集まって、和気あいあいと座る席も無い程彼女の部屋を占めていた。ところが、段々と対象者が減って来たとの、彼女の性格の荒れた対応に辟易して来たメンバーが、私の誘いに遠まわしに断るようになった。
躁鬱的な感情が抑え切れないのがあるとは聞いていたが、その場面に当たった事が無いので、想像がつかない。しかし、部屋に入るなり彼女の余りの変わり果てた面相に驚いた。げっそりした頬、目の座っている彼女の顔はあれほど感情が現れていたのに、全く表情が無い彼女になっていた。
いつも、一目見ただけで喜びを動かない体中に、顔中に表すのだが、私を見つめるのに精一杯だ。
 喜びは無く、いつも手を握って離さない仕草も全く無い。ダランとした体で、座っているのが精一杯だった。何か雰囲気が違う。話も弾まない。伏し目がちに何か言おうとしているのが分かるが、ただ黙っていつもの喜びも笑顔も無い。
じっとしている空気に耐えられなくて、何か言おうとしているのだがなにも言葉が出ない。やっと、考えて何かを言おうとして、その顔を見ると興味無さそうにただ見つめているだけ。
 心配になって、
 「何かあったのか。」
 と、聞くがうつ向いて
 「何も無い。」
 と、言うだけ。
 やっと、気をとり直して、私にコピーのA43枚の紙を渡す。
 「これ、私からのプレゼントです。」
 中を見ると、私の名前が印刷されてあり、血液型で性格がある用紙だった。
 「こんなもので済みません。プレゼントのお返しはこれしかできないんです。」
 そんな気遣いをしなくて良いと、
 「みんな私の性格に合っている。頂きます。」
 と、言ってバックに仕舞った。
 また暗い雰囲気が漂っている。
 どうしたのかを何度も来たが、何でも無いという。
 ゲームをしようとゲームを出したが、全く気が無いので続かない。
 そう言っているうちに、
 「済みません。佐藤さん、済みません。」
 と、言って、何度も謝り出した。
 何の事か分からない。暫くして、涙が頬を伝い出した。
 「どうした。何かあったら言いなさい。出来る事は何でもするから。」
 「佐藤さん、市役所に勝てますか。」
 「勝てるってどんな事で。」
 「市役所に勝てますか。」
 何度も同じ事を聞く。
 「勝てない事は無いから、何でも言って。」
 「お願いします。もうデイに行きたくないんです。佐藤さんのところで、週3回の入浴して貰えますか。」 
 「それは大丈夫だけれど、どうして。あれほど楽しいと言ってデイサービスに行っていたのに。」
 「デイの人にひどい事を言われたんです。だからもう行きたくないんです。」
 「ひどい事って、どんな事言われたの。」
 「嫌いだって言われたんです。」
 「何で嫌いだって言われたの。」
 そう聞いても、
 「分からないんです。あれほど仲良くしていたのに。お手紙を書いたんです。一生懸命書いたのに。」
 そう言って、また、両頬を大粒の涙が流れた。
 一生懸命に拭っても拭っても、流れを止められない程あふれ出ている。暫く待って、
 「他の利用者の方にも、ひどい事を言われて。デイに行くのが怖いんです。佐藤さん、お願いします。デイに行かなくても良いように、家のお風呂で入浴をしてくれますか。」 
 「それは大丈夫だけれど、会議を開かないと行けない。そこで、集まって君の話を聞き意思を確認して決まる。その提案は、当社の方でするので、聞かれたら自分の考えを言わないと行けないよ。本人が思っていないのに、事業者が勝手に決めるなんて出来ないから。」
 「市役所が怖い。怖いんです。大丈夫でしょうか。ちゃんと言えるでしょうか。もうデイには怖くて行きたくない。」
 「大丈夫、自分の考えがちゃんとしていてはっきりと希望を言えれば大丈夫です。」
 そんな話を、1時間程していた。

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